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【抹茶の真実】「品種は何ですか?」
海外の抹茶愛好家が誤解している、味を決める最大の要素
最近、海外のお客様からSNSやショップのお問い合わせを通じて、こんな質問をよくいただきます。
"Could you tell me the cultivar of this matcha?"
(この抹茶の品種は何ですか?)
正直言って、ちょっとうんざりしてしまいます。
これを知って何が分かるのだろうかと疑問に思います。
ワインの「ブドウの品種」や、コーヒーの「豆の品種」にこだわるように、抹茶の世界でも「さみどり(Samidori)」や「あさひ(Asahi)」といった『品種(Cultivar)』を気にする海外の抹茶愛好家(Matcha Connoisseur & Matcha Geek)が増えてきています。
抹茶のプロフェッショナルとして、その探求心は非常に素晴らしいと思います。
しかし、あえて厳しいことを言わせてください。
「品種」だけを聞いて、その抹茶の味を想像しようとするのは、大きな誤りです。
なぜなら、抹茶の本当の味わいや品質は、品種ではなく「どこで、どのように育ったか(生育環境=テロワール)」によって決定づけられるからです。
お米で例えれば、すぐにわかります。
日本人の主食である「お米」で例えてみましょう。
日本で最も有名な美味しいお米の品種といえば「コシヒカリ」です。
しかし、「品種がコシヒカリであれば、全国どこで育てても同じ最高の味になる」わけではありません。
日本で最も美味しいとされる「新潟県産のコシヒカリ」がなぜ別格なのか?

それは、新潟という土地が持つ「昼夜の激しい寒暖差」、「山から流れ出るミネラル豊富な雪解け水」、そして「粘土質の肥沃な土壌」という、米作りに理想的な環境(テロワール)がすべて揃っているからです。
他の県で同じ「コシヒカリ」という品種の種をまいても、決して新潟のコシヒカリの味にはなりません。
抹茶も全く同じです。
抹茶の原料となる碾茶(てんちゃ)も同じです。
例えば、抹茶の代表的な優良品種である「さみどり」。
この品種は緑の鮮やかな色あいと渋みがなく旨味が強いのが特徴です。
肥沃な土壌と適度な水分を持つ「木津川の浜(川沿いの肥沃な砂地)」で栽培された「さみどり」と、霧深く日照時間が短い「山間部」で栽培された「さみどり」では、同じ品種の茶の木であっても、茶葉が蓄える成分、引き出される旨味、香りの質が全く異なります。
浜で育った茶葉が持つ、力強い旨味とふくよかさ。

同じ「さみどり」というラベルが貼られていても、育った畑が違えばそれは全く別次元の味わいを持った素材なのです。
さらには育った畑が同じでも若い樹からは旨味ある茶葉が摘まれ、樹齢を経た樹からはまろやかさのある茶葉が摘まれます。そこに肥料の入れ具合で茶の持つ「力強さ」が変わります。
同じ品種でも力のない抹茶があるんです。
これは感覚的なもので伝えるのが難しいですが、肥料を控えれば控えたものほど力のない茶ができます。
満開のバラと弱々しいバラ、その美しさの違いのようなものがお茶を飲んだ時にも存在します。
私たちの取扱いブランドでもある宇治抹茶でも祥玉園の「さみどり」と辻喜の「さみどり」は品種が同じでも畑も違えば与える肥料の種類や量も違います。
地理的にも祥玉園は木津川市、辻喜は宇治市で距離にして15kmほど離れており、これが同じ「さみどり」でも全く同じ味わいにはならないのです。
店頭でも海外からのお客さんに「さみどりが欲しい」「この品種は何?」とよく聞かれますが、その質問から美味しい抹茶にたどり着けるとは到底思えません。
これはおそらく海外の抹茶愛好家(Matcha Geek)がこの品種が美味しいと言い出したのが派生したのだと思います。そのアナウンスは間違っているよと、私たちがいくら言ってももう世界中に派生したSNSには勝てません。
真の抹茶は「自然環境」と「茶師の技」の結晶
だからこそ、京都・宇治の歴史ある老舗茶舗(当店が扱う祥玉園、辻喜、吉田銘茶園など)は、単一の品種や単一の畑の茶葉に依存しません。
「今年の木津川の浜のさみどりは旨味が強いからベースにしよう」
「あさひの香りを少し足して、全体のバランスを完成させよう」
このように、産地や生育環境によって異なる特徴を持つ茶葉を見極め、代々受け継がれてきた比率でブレンド(合組 - Gogumi)することで、毎年変わらぬ「究極の味わい」を作り出しているのです。
海外の抹茶を愛する皆様へ
次に日本の抹茶を選ぶときは、どうか「What is the cultivar?(品種は何ですか?)」という質問から離れてみてください。
そのお茶が、どんな美しい川のほとりで、どんな霧深い山の中で育ったのか。
その背景にある「自然(テロワール)」に想いを馳せたとき、あなたの抹茶体験は、さらに深く、豊かなものになるはずです。それが茶農家や茶問屋が合組をすることでより複雑な旨味となり私たちの喉を潤してくれます。
ということで、まとめるならば
うちは品種なんかで語る浅いレベルの抹茶はおいてない。本物のテロワールと合組という歴史を売ってるんです。
ということです。
とはいえ、わざわざ来店してくれた人にこういうことを言うとその人のプライドを傷つけそうなので営業スマイルを振りまきながら品種の質問に答えているのが現実ですが。
これを読んで少しでも多くの抹茶愛好家たちに伝わり、問い合わせが減れば良いなと思います。
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